カツ丼といえば卵とじが当然であり、それ以外は味噌をかけたものしかないと長らく信じてきたのだが、ソースカツ丼なる食物の存在を知ったときには不思議であった。
ご飯の上にトンカツをのせてソースをかけるなら、トンカツ定食をどんぶり物にしただけではないか。それなら、しょうが焼きをご飯にのせればしょうが焼き丼だし、サンマを乗せればサンマ丼である。
それに、揚げ物をご飯にのせてソースをちょこっとかけただけだと、ご飯とソースがぐちゃぐちゃと混じり合い絶妙の味加減になるどんぶり物の醍醐味が全く味わえないではないか。
そんな思いから長らくソースカツ丼を敬遠してきたのだが、北関東方面に旅行中に同行者が食しているのがうまそうで、少し食べさせてもらった。するとなぜだか妙にうまいのである。ご飯とカツをいっしょに食べているだけなのだが、なぜだかうまいのである。
単に空腹だっただけかもしれないと思い、その後も何度か試したが、やはりなぜだかうまい。最近では卵とじや味噌よりも好きになってしまった。
ソースカツ丼地域を調べてみると、北関東や甲信越南部、東北南部と東京を包囲し、まさにいま首都圏進撃の機会をうかがっているかのようである。他にも北陸や北東北にもソースカツ丼地域は散在しているらしい。
なぜこれらの地域では、一般的な卵とじのカツ丼でなくソースカツ丼が根付いているのか。ソースカツ丼地域間での地域差はあるのだろうか。いままでは漫然と食していたが、これらのことが気になりだし、ひとまずそれぞれの地域の代表的な店で食べ比べてみようと思う。
会津若松では、ソースカツ丼を提供する店舗が伝統会津ソースカツ丼の会を結成している。その会の中で、昭和五年開店当時の味を守り抜いているという謳い文句に惹かれ、若松食堂へ。
とりあえずフタ付きでカツ丼が出てきましたが、店内ですぐに食べるのになぜ? そういう文化なのでしょうか。ご飯の上にトンカツがのっているので、厚みでフタはピッタリとは閉まっていませんでした。
さらっとした少々甘味のあるタレが、サッとかけてあるだけなのですが、でもなぜだかうまいのです。カツの下にはキャベツが敷いてありましたが、キャベツの有無にも地域差があるようです。